元受刑者との新たなコミュニケーション回路?―バーチャルYoutuber 懲役太郎のリアルイベント・レポート

今話題のバーチャルYouTuber懲役太郎さんをご存知ですか?
刑務所での体験をもとにしたおもしろエピソードから、昨今の社会情勢(とりわけ犯罪に関するニュース)に関するまじめな話、視聴者からの人生相談まで、幅広い動画コンテンツを配信している注目のYoutuberです。

その懲役太郎の初のリアルライブイベントが秋葉原で開かれ、見事私は模ファン囚になりましたので、今回はそのイベントの様子を記事にしました。

イベント終了後に配られた仮釈放証明書

Vtuber 懲役太郎とは・・・

Vtuberの懲役太郎とは、udp8所属のバーチャルYoutuberです。

以下、ニコニコ大百科から抜粋すると

その名の通り、彼は現在檻の中で懲役中であり、常に「前科三犯 称呼番号893番 懲役太郎」として務めを全うしている。つまり、檻の中から配信を行っているバーチャルYouTuberである。
バーチャルYouTuberをはじめた理由は、懲役中に「子供が憧れている」「儲かる」職業として、YouTuberを見つけたからであり、協力者を介して外部に情報を発信している。

もちろん、本当に懲役中にYoutubeを配信することなどできませんので、
いわばバーチャルYoutuberとしての設定が上記のようになっています。

しかし、その懲役太郎の放送、さまざまな刑務所の中でのリアルな体験や知識を説明する話しぶりは、私が日ごろ元受刑者たちから聞いている話とも合致するということもあり、おそらく懲役太郎は実際に刑務所に服役していた経験があることがわかります。

いちファンとして、全放送を見てほしいですが、私が好きな話を以下に貼っておこうと思います。

Vtuber 懲役太郎のリアルイベント

さて、この刑務所での体験をコンテンツとして配信するVtuber懲役太郎が、秋葉原でリアルイベントを開催しました。といっても、懲役太郎の中の人に会えるわけではなく、大きなスクリーンに映し出された懲役太郎と、集まったファンが質問などもできる場があったりといった、そんなイベントです。

私は懲役太郎しか知りませんが、Vtuber文化の中では、おそらく一定数のファンができたところで、リアルイベントを実施するというのが王道のようです。
「リアルイベント開催、おめでとうございます」といった祝辞の電報(映像)が、他のVtuber(udq8所属)から寄せられていました。

懲役太郎は、元ヤクザで前科3犯があり、普段は十数年の服役中の話をネタにエンタメとしてやっています。被害者もある話なので、懲役太郎のそうした態度に対する倫理的な賛否はありそうですが、今回のリアルイベントは、予想に反して感動的なイベントでした。

まず、懲役太郎が普段の配信ではできない家族の話をしたのです。こうしたイベントが開けるようになった、立ち直りができた、その背後には家族の支援があったのだと。
過去には、兄弟に対して進学や就職、結婚まであきらめさせるような事態も招き、母親にも本当に迷惑をかけて、でも今は誰よりも家族が放送を見てくれて、手紙でダメ出しを送ってくると。
家族の支え無くしては、今日このイベントは開けなかったと……。

そして、会場から質問が寄せられますが、ほとんどの質問者が複雑な家庭事情の身の上話から始まり、ある人は親からの虐待を受けてきて、今その親の介護に迫られていて、複雑な気持ちでいるのをどう整理したらいいかとか、父親の虐待経験から男の人が怖くて恋愛ができなそうだとか、とにかくもう複雑な人生相談ばかり。

しかし、的確に答えていく懲役太郎と、それを聞きいる観客たち。

元受刑者で犯罪加害者であったはずの懲役太郎のもとに、ある種の被害者や生きづらさを抱えた人が集まって悩みを打ち明ける、この場は一体なんなのだろうかと、驚きました。エンタメでやっているはずなのに、ゆるやかなコミュニティに見えて、実はいろんな生きづらさを抱えた人が集まって、自らをさらけ出して語れる場を創出していることに驚きました。

ここで、重要なのは、おそらく懲役太郎がヴァーチャルな存在であることだと思います。

誰もが、懲役太郎は実際に服役経験がある元犯罪者であろうことを知っている。しかし、それは設定かもしれないという想像の余地を残しておく(バーチャルな存在)、このことが元犯罪者との新たなコミュニケーション回路を築いているのではないでしょうか。もし仮に、リアルな顔を出して配信していたら、コメントで叩かれまくるかもしれません。

実際、元受刑者が語るYoutube動画はバッド評価が多く、コメントも厳しい内容が多いです。懲役太郎のもとにも、おそらく同様の厳しいコメントがいっているかもしれませんが、それにも負けず、リアルイベントを遠方から訪れるほどのファンを獲得しています

そしてこのファンが、懲役太郎の立ち直りを支えているともいえます。

自己責任が叫ばれる現代社会で、犯罪加害者の社会復帰について社会の理解・支援を得ることは非常に難しいのですが、これは、現代のネット社会ならではの社会復帰の新しい姿のようにも思いました。

ちゃっかりグッズを買いました。

懲役太郎グッズ、クリアファイル