前回の「香港懲教博物館Correctional Services Museum」に続き、
今回は、中環(Central)駅から近い、「大館Tai Kwun」をご紹介します。
旧警察本部や監獄跡をリノベーションして、2018年5月にオープンしたばかりの新しい文化複合施設です。
大館 Tai Kwun
全体を捉えるような写真は撮れないほど、かなり広いです。古い建築もあれば新しい現代美術館もあり、展示施設のみならず、カフェや雑貨屋も多く、ショッピングも楽しめる場所で、多くの人でとても賑わっていました。
プロモーションビデオもあるので、その方が全体の雰囲気が伝わるかもしれないです。
他にも、煉瓦造りの建築を残しながら、舎房跡の一つ一つを展示ブースにして、監獄の朝食の変遷とか、受刑者が創作した小説をデータ化してあって、タブレット上で読めるようにしてあったりなど、かなりコンテンツは充実していました。
前回の「香港懲教博物館Correctional Services Museum」と異なり、過酷な監獄生活などをまじめに歴史を学ぶ感じというよりは、イラストやらデジタルコンテンツやらを楽しみながら学べるような、そんな雰囲気を全体として感じました。
広場のようなところには、監獄のモチーフと思われる鉄柵を使ったパブリックアートが置かれていたり、歴史だけでなく現代性も共存している感じです。
これは日本(唯一の例:網走監獄博物館)には無い部分だと思います。
歴史をそのまま伝えることに加えて、現代のアーティストなどが、それを読み替えたり、別の想像力を働かせる装置にしたりすることが日本でも広がってほしいです。
五大監獄のひとつである旧奈良監獄はホテルにリニューアルされるそうですが、ただの宿泊施設ではなく、こんな感じになるといいな。
現代美術館では、映像インスタレーションの展示があり、中国人作家のCao Feiさんによる《監獄建築師 Prison Architect》という作品でした。オープンしたばかりということもあり、監獄跡という場所性をかなり意識した作品ですね。ちなみに、入場無料です。
来場者は、会場内に設置されている監獄にありそうなベッドに座ったり寝そべったりしながら鑑賞できるようになってました。こんな広々と空間を使える作品も日本だと少ないのかな。
ストーリーは、監獄跡のリノベーションを依頼されたであろう建築家が、監獄を建築(設計)した当時の設計者や、そこに収容されていた囚人に思いを馳せつつ、時空を超えた監獄建築師と囚人の出会いみたいな話だと思います(英語の字幕だったので…)
映像だけ見ていると、見方によっては『君の名は』みたいな感じもしました。
後半のクライマックスで、当時の囚人が現代のリノベーションされた大館の監獄の外に出て、監獄と同じくらいの樹齢を持つマンゴーの樹から、土砂降りの雨の中、マンゴーをおいしそうに食べるシーンが印象的でした。この映像を中核に、映像の中にあったセットやマンゴーなどが、各所に展示されているような構成です。
その他にも、この美術館のコレクション展もあり、それは監獄とは関係のない、昨今現代美術が接近する「日常」がテーマだったりもして、中には日本人作家の作品もありました。
入場無料にも関わらず作品数も多いので、現代アートファンにはかなり嬉しいかもしれません。
また香港に行くことがあったらもう一度行きたいのは、ここですね。オススメです。
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