香港旅行記〜その1

香港を訪れたので、監獄にまつわるいくつかのスポットを
全3回にわけてご紹介します。

香港懲教博物館 Correctional Services Museum

まず最初は、香港島の端っこ赤柱(Stanley)にある香港懲教博物館Correctional Services Museumです。
中環(Central)駅から赤柱(Stanley)行のバスに乗って1時間ほどで行けます。
スタンレーにはちょっとしたショッピングモールや市場があるので、そこまで辺鄙な場所でもありません。実際、平日に訪れたにも関わらず、多くの来場者(親子など)がいて驚きました。
すぐ近くにバスターミナルがあるので、帰りも10分か20分は待てば帰りのバスに難なく乗れます。

ここは、日本で言うと「博物館 網走監獄」のような行刑の歴史を知ることができる場所ですが、規模はかなり小さく、香港における監獄の歴史、昔の刑罰から現在のリハビリテーションのプログラムまでを展示しています。
ちなみに、入場無料です。

処罰の歴史だけでなく、第二次大戦中の日本による占領期の状況や、戦後のベトナム難民収容の歴史なども含まれていました。日本軍の爆撃によって、香港の中心にあったビクトリア監獄が使用できなくなり、多くの囚人がスタンレーの監獄に移ってきたのです(そして、おそらく過剰収容な状況になると思います)。日本の影響が香港の監獄・囚人まで届いていたのです。

2階建てのツーフロアしかない小さな博物館ながらも展示は充実しています。

私が興味を持ったのは、やはり、当時の限られた環境下で発揮されたプリズナーたちの創造性の産物で、時計を改造したルーレットや、手作りタトゥーマシーン、手作りトランプやカードの類いなど、大変器用に制作されたものが、ちゃんと残ってました。

けっこう過酷な状況が解説パネル(英語)には記載されているものの、どんな状況にあってもこうした遊びは生きていくのに欠かせないのだと思います。

Hong Kong Correctional Services のWebサイトを見ると、現在のリハビリテーション・プログラムの中には「Creation and Rehabilitation」という芸術活動があるようです。
受刑者(PIC:persons in custody)による演劇と音楽のパフォーマンスが、一般の中学生などの若い人たちに披露されるようです。受刑者達はこのクリエティブな活動によって、人生を考え直し、それを鑑賞する中学生らは、受刑者達がどのように社会復帰に努めていこうとするのかを感じ取ることができると同時に、罪を犯すことが人生にどれほどの影響を与えてしまうのかを学びます。

この「Creation and Rehabilitation」は、「Rehabilitation Pioneer Project」の一つのプログラムで、それ以外にも、受刑者の話を直接聞く機会や、施設を訪れること、この博物館で歴史を学ぶことなどが中学生らに開かれていて、全体で年間3万人もの参加者がいるようです。

日本では、受刑者と中学生が交流するというのはほとんど不可能に近いと思いますが、受刑者たちは誰かに語ることによって自らを見つめ直し、中学生らにとっては、犯罪者の人生の大変さを知るある種の警告を受け取って法を守ることの意識につながる、双方への良い影響が考えられているプログラムだと思います。

日本にも、網走監獄以外にも、監獄博物館が増えるといいな。

(続く)

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