網走旅行記〜その1

日本で監獄遺跡旅行といえば、欠かせないのが「博物館 網走監獄」ですね。
私は2018年6月に訪れました。

網走監獄は博物館として、日本の行刑の歴史を伝える貴重な資料の保存・公開の役割に加えて、漫画『ゴールデン・カムイ』の舞台でもあるので、今では網走市にとっての主要な観光資源にもなっています。

通常、刑務所は迷惑施設とされ、忌み嫌われる存在ですが、網走市と網走刑務所は明治以来、深く関わりを持ち、そして現在も監獄の町(観光地)として有名です。

 

網走監獄とは

網走監獄は、開拓監獄と呼ばれ、明治期の北海道開拓におけるメインプロジェクト「中央道路の掘削工事」に囚人を用いたことの歴史が展示物によって示されています。

監獄歴史館内 展示

その歴史は、「博物館 網走監獄」のWebサイトでも詳しく解説がありますが、大まかに説明すると、幕末から明治にかけてのロシアの南下政策に対し、日本は北の領土「北海道」を国防上守る必要性に迫られていました。また、明治初期の日本は、西南戦争・秩父事件等の内戦・内乱が多発し、逮捕者が続出したことから監獄は過剰収容に陥っていました。そこで、北海道開拓と同時に、収容過剰を解消する策として、北海道を流刑地とし、囚人労働を以て開拓を進める構想が持ち上がったのです。
(詳しい歴史は、こちらを参照ください)

罪人を使い捨て、囚人を使って北海道開拓を進めれば、安く労働が確保でき、監獄費の削減にもなるという考えとして、当時の内務大臣山縣有朋はこれを採択し、「苦役本文論」「死の憲法の発布」として有名な訓示となりました。

この発想は、フランスが植民地の西アフリカ等で永年実施したメゾン・セントラル(日本では集治監と呼ぶ)方式に立つ奴隷・罪囚の使役策です。

集治監は樺戸(現在の北海道樺戸郡月形町)を本監に、空知・釧路・網走・十勝の各分監を設けていきました。1881年から1903年にかけ存続した各集治監の主要な開拓業績は次の通りです。

樺戸本監:森林伐採、農耕地の造成、石狩川の防堤・峯延道路の開鑿、橋梁・家屋・寺院の建設
空知分監:幌内炭山の石炭採掘、市来知水道の敷設、上川仮道道路開鑿
釧路分監:最初は標茶(しべちゃ)と呼ばれ、露天の硫黄山跡佐登(アトサヌプリ)の硫黄採掘搬出、建築用材の伐採搬出
網走分監:森林伐採、農耕地の造成、旭川に向けた中央道路の開鑿
十勝分監:洋式大農場の造成、狩勝峠の開鑿ならびにその鉄道線路敷設工事

旧網走庁舎内 展示風景

なので、網走監獄が有名ではあるのですが、樺戸が本監であり開拓監獄の始まりです。月形樺戸博物館にも貴重な資料が集まっています。

 

主な展示、網走監獄の楽しみ方

網走監獄マップ WebサイトよりPDFがダウンロードできます

「博物館 網走監獄内」は非常に広く、いくつかの建物に展示が別れています。いくつかの建築物は重要文化財にも指定されていますが、全て移築建築です。

網走監獄の歴史や、展示物を概観するためにもまずは、無料の「監獄ガイドツアー」に参加することをおすすめします。どんな建物がどこにあるのかをめぐるようなツアーですね。1日3回(10:00〜、11:30〜、14:30〜)行っています。

監獄ガイドツアーのスタート地点は、「網走監獄旧庁舎」です。ここには、お土産コーナーもありますが、先程紹介した北海道の各所に置かれた集治監―樺戸・空知・釧路・網走・十勝―について知ることができ、まて、プロジェクションされている映像では、典獄(かつての典獄の長)が熱いメッセージを送っています。まさに、網走監獄を見学するならまずはここから、という場所です。

旧網走監獄庁舎内 「典獄は語る」

監獄ガイドツアーのスタート地点(集合場所)ですので、まずはツアーが始まる前にここ「網走監獄旧庁舎」を見学することをおすすめします。

ツアーは、その時々で順序やコースが変わるようですが、庁舎を出発後は敷地内の様々な建物を紹介してもらいながらまわります。そして、私が参加した時のツアーのラストは、「監獄歴史館」だったので、そのままメイン展示が置かれている監獄歴史館を見学しました。

監獄歴史館メイン展示「赫い囚徒の森・体感シアター」

「赫い囚徒の森」体感シアターに、網走監獄が伝えたいメッセージの全てが凝縮されていますね。囚人たちが、犠牲を出しながら中央道路開削の工事にあたっていたことに思いを馳せ、どんな暮らしをしていたのか、その衣・食・住の暮らしぶりが敷地内の各所に展示されているという構成と思えます。

この監獄歴史館に情報は凝縮されていますので、ここで歴史や情報を得たら、あとはツアー中に気になった建物を再度まわる、そんな見学の仕方が良いと思われます。
Webサイト上でも、展示施設の紹介があり、どんな建物があるのかがわかりますので、ぜひ出発前にご覧になって見学の妄想を膨らめてください。

 

食事・お得情報

博物館 網走監獄のひとつの目玉は、「監獄食」です。博物館入り口の外にある監獄食堂で食べることができます。これは、現在稼働している網走刑務所の食事を再現したものとされていて、私はホッケのメニューを選びました。

監獄食B(ホッケ)

また、私は網走駅近くのホテルに宿泊した際、ホテルカウンターに網走監獄の割引チケットがあったので利用しましたが、よく調べると、「博物館 網走監獄」のWebサイト上にも割引券がありましたので、こちらを利用することをおすすめします。

最近は、最新メニューも追加されたとのニュースが。

 

アクセス

私は東京から女満別空港へ行き、到着すると網走駅まで向かうバス(女満別空港線)が出ていたので、それに乗って網走駅周辺のホテルに宿泊をしました。網走駅から「博物館網走監獄」を含む観光地をめぐるバス(定期観光バス)があるので、こちらで行くことができます。

私は、待ちきれない思いと、現役で稼働している網走刑務所に立ち寄りたいということもあり、網走駅前のホテルから徒歩で「博物館網走監獄」へ行きました。かなり山を登るので、天候と体力から判断してください。

「博物館 網走監獄」以外の網走の見どころについては、次回にまわしたいと思います。

(つづく)

※参考文献

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