Arts in Prisonの事例紹介として、アメリカのCalifornia Arts in Correctionsを紹介します。
California Arts in Correctionsの歴史
アメリカ・カリフォルニア州では、刑務所における芸術プログラムが盛んに行われており、その考えは決して古いものではありません。
1940年代に、刑務所長であったClinton Truman Duffyは、サン・クエンティン州の刑務所において、受刑者や刑務所職員のために改革が必要であると判断し、社会復帰をより良くするようリハビリテーション・プログラムを開始しました。
また、Duffyは、受刑者に対し、新聞を発行することやラジオ局の運営を許可し、音楽や絵画、その他の芸術活動を施設内で許可しています。
1976年にカリフォルニア・アーツ・カウンシルが設立され、アーティストのEloise Smithが最初のディレクターに任命されました。彼女は、受刑者のアートワークを見て、その才能や生きた芸術に感銘を受けました。
1977年に、彼女とその夫は、カリフォルニアの医療施設において、Prison Art Projectをパイロットプログラムとして創設しました。彼女は、このプロジェクトのために、サンフランシスコ財団、全米芸術基金(NEA)、カリフォルニア・アーツ・カウンシル、警察の補助機関(the Law Enforcement Assistant Administration)から資金を獲得し、非営利団体を創設して援助しました。
この実験プロジェクトは大成功を収め、州議会や州知事からの支援と資金を得ることにつながり、現在知られるArts in Correction(矯正における芸術)のモデルとなり、州全体にこのプログラムが広まります。
しかし、2003年に、州予算の危機により予算が削減され、AICは規模を縮小し始めました。そして、2010年までに州による資金は完全に停止。予算削減の中にあっても、ボランティアや民間資金の活用により、団体やアーティストが活動を続けました。
また、Actors’ Gang Prison ProjectやMarin Shakespeare Company、William James Association、California Lawyers for the Artsなど、多くのパートナー組織がプログラムの復帰を主張していました。
現在の取り組みとその効果
2013年・2014年には、カリフォルニア州政府矯正・リハビリテーション局(CDCR: California Department of Corrections and Rehabilitation)とカリフォルニア・アーツ・カウンシルとのパートナーシップのもと、AICのプログラムを矯正施設に戻すパイロット事業を開始し、2017年6月時点において、35の州のすべての成人矯正機関に芸術プログラムが提供されています。
AICのプログラムは、2500人のメインラインのサン・クエンティン州刑務所の受刑者のうち約300人に対し、ペインティング、ドローイング、プリントメイクなどの講座を通じてサービスを提供しています。
外部講師となるアーティストはボランティアであるか、または助成金を受け取っています。
AICのプログラムによる効果として、
- 受刑者と刑務所職員間の対立を減らすこと
- 家族関係を強化すること
- 批判的思考を身につけること
- 社会でのジョブスキルが身につくこと
などが挙げられています。